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【#0111】エイジングの妙 1

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※こちらは2009年7月に更新されたアーカイブ記事です。
記事内に掲載されているアイテム、及び発売予告などの記述に関しましては過去の記事となりますので現在はお取扱いを行っていなかったり、また既に完売となっているものもございますこと、予めご了承下さいませ。

 

経年変化する革には、色々な物語が刻まれるものですね。

 

 

お店に立っていると、お客さんから年季の入ったWILDSWANSの革小物を見せていただく機会が時々あります。今も現役で使われているもの、昔使っていたもの等様々です。

 

それらはどれも、使われている方々の個性が見事に反映されていて大変興味深く拝見させていただいてます。そしてどれも同じ物が2つと無いので、私から見ると大変尊いものに映ります。

 

傷も付き、新品の時と比べると大分くたびれている筈なのに、何故か円熟味を増し風格すら漂わせているそれらは、長い年月をかけた物語が目に見える1つの形と成って表れていて、思わず顔を近つ゛け見入ってしまいます。そんな時は「ほー!」とか「は~!」とか間抜けな言葉しか出てこない自分が悲しいのですが、人が使用した物には確実にその人の形跡が残り、そこにある物語にきっと唯一無二の尊さを感じるのだと思います。

 

面白いのは自分が使用している革小物には円熟味が増したことに中々気付かないという点と、自分の思い通りにエイジングしてくれないという点です。

 

特に白ヌメと呼ばれるナチュラル色に関しては、本当に自分の思い通りになってくれません。(←ところが人のを見るとやたらと良く見えたりするのが不思議です。)

 

一般的に「白ヌメは育てるのが難しい」と言われていますが、白ヌメの場合は黒やチョコレート色などに比べて自分の理想とする色・艶と現実の色・艶の落差が激しい為ではないかと思います。

 

「こう育てたかった」のに「こう育ってしまった・・」と、我が子を嘆くような気持ちに近いのかも知れませんが、それでいいのだと思います。身も蓋も無い言い方ですが、どんなに気を付けていてもなるようにしかなりません。それもまた個性の現れや物語の一部だと思います。(投げやりに言っているのではなく、自然のものは大抵思い通りになってはくれないものです。)

 

話が逸れましたが、革小物に限らず対象が「家」でも「家具」でも使う人の顔が必ず出てきてしまうもので、それを「味」とか「その人らしさ」とか呼んでいるのかも知れません。

 

祖母が使っていた椅子の手摺の部分は経年変化で塗装も剥がれ、変色もしています。椅子から立ち上がる時、右に重心をかけるので、右側の手摺が特に顕著です。その椅子を見るにつけ必ず祖母がどっこいしょと立ち上がる姿が映像で浮かぶのが可笑しかったりします。

 

人によってはそれが形身の万年筆かも知れませんし、その人が住んでいた家やその人が使っていた部屋なのかも知れません。

 

「物語」とは大袈裟な言い方をすれば、その人が生きた形跡なのだと思います。

 

ある日1人のお客さんがお店に来られました。Oさんというこの方は、ありがたい事に昔からのWILDSWANSの革小物のユーザーで、一目で大事に使われていると分かる当時の革小物を見せていただきました。

 

それらはOさんの人柄が出ていて大変興味深かったのですが・・・、

 

続きます。

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