※こちらは2010年3月に更新された過去のブログ記事です。
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毎年の「開花予想」に代表されるように、動向が全国に逐一報道されるほど、日本人にとって桜は最も馴染み深く、気になる植物なのかも知れません。 一体何故なのでしょうか。
「すぐに散ってしまう儚さが好きだから」「冬が終わって春の訪れを告げるから」「単純に綺麗だから」と、心の琴線に触れる理由は人それぞれあるのだと思います。
また梶井基次郎の「桜の樹の下には」や、坂口安吾の「桜の森の満開の下」などの文学作品などにもあるように、単純な美しさだけでは無い、花底蛇(かていのじゃ)とも言える何かを感じさせる樹木でもあります。
数年前、人間国宝でもある染織家の志村ふくみさんがNHKの番組に出演されていたのですが、その中で小学生の子供達を相手に草木で糸や布を染める授業をされていました。志村ふくみさんはとても物腰が柔らかく、また品があり、一度見たら忘れられないほどのオーラ全開の方なのですが、本当に楽しそうにワイワイやりながら作業をされていました。
その中で桜を使って糸をピンク色に染める作業があったのですが、てっきり桜の花びらで染めるのかと思いきや、樹皮を矧がして煮出してピンク色に染めていたのには大変驚いた記憶があります。 (それも開花する直前のものでなければ、綺麗なピンク色にはならないそうです。)
番組の中で「植物から色をいただいています」と、植物を弔う心で語る志村ふくみさんは京都の静かな工房の中で、カタンカタンと、古い織り機で織物を紡いでいました。
桜の花の淡いピンク色というのは、太い幹の中で樹液として満ち溢れていたものが、ほんの束の間、目に見える形(花びら)となって現れたに過ぎず、実は樹木の内部や全身で、精一杯体現していた訳です。
その現象を知るには対象と向き合って会話しないと分からないことばかりですので、「植物から色をいただいている」という言葉の中には、きっと途方も無い植物との対話があったに違いありません。