※こちらは2009年4月に更新されたアーカイブ記事です。
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イタリア産の革、「ミネルバ」についてその2は、この革の歴史と特徴についてです。
自然に風合いが変わっていくのは、木も石も革も同じで、使っていくほど表情は変わっていきます。ミネルバという革も、驚くほど風合いが変わっていきます。上の写真はミネルバ・リスシオ(Minerva Liscio)のグリージオという色ですが、革チップの上半分と下半分とでは、色・風合いが、かなり異なります。
バダッラシー・カルロ社は、もともとイタリア古来の伝統的な革鞣し技法である、ヴァケッタ(Vacchetta)製法を研究していた先代が、その製法を現代に蘇らせたことで有名なタンナーです。(その製法のルーツは中世まで遡り、一部では8世紀頃から始まったとも言われています。)
効率優先の為、現在の革の多くは合成油・魚油を使い、機械化の導入をたどる一方ですが、バダッラシー・カルロ社の場合、時代に逆行するかのように、伝統的な革作りを貫いています。
化学薬品では無く、植物性のタンニンを用い時間をかけて鞣された革に、家畜牛のすね骨や無蹄足を煮沸して採取した、純度の高い所謂「牛脚油」で、時間をかけながら、ゆっくりと革に加脂していくそうです。油が浸透しにくいので、とても時間と手間がかかる作業ですが、その代わりにオイルが抜けにくく、使い込んだ時の色艶の上がり方が大変綺麗で、美しくエイジングされるのが特徴です。
手作業の工程がいくつもあり、とにかく時間と手間がかかるので、当然コストもかかるそうです。(杉丸太の場合も、枝打ちを何回も繰り返し、節の無い真っ直ぐな木に育てた後、外皮を取り去って白木丸太にし、砂を使って手で揉み込むように磨き上げ、時間をかけ乾燥して仕上げます。良いものを作るには、この、人の手による作業というのが、今も昔も変わらずに必要なのでしょう。)
バダッラシー・カルロ社では色々な革を作っていますが、その中でも個人的に「銘革」と呼びたくなるのがミネルバです。
スムースの状態をミネルバ・リスシオ、それにシュリンク加工を施したものがミネルバ・ボックスになります。(リスシオの方はC.O.U.でもパターンオーダーや一部製品の中で取り扱っていますが、その味わい深さ・熟成の具合は万年筆の専門店・FULLHALTERさんのホームページにとても詳しく載っていますので、必見です。)下の写真は、ミネルバ・リスシオのナポリという色で作ったパスポートケースのサンプルです。元々は黄色でしたが、2年ぐらい使用するとこのような色・艶になります。
内側は元の色に近い、黄色っぽい色です。
ミネルバ・リスシオもミネルバ・ボックスも共通の印象として、手で持ったときの感触が、オイル分のせいか、とてもしっとりとしています。初めはどちらかというとマットなので光沢はありません。これが使うほどに色が深くなっていき、どんどん艶が上がっていくので変化の仕方がとても劇的です。
エイジングを好まれる革好きの方でしたら、ご満足いただけると思います。