※こちらは2009年1月に更新されたアーカイブ記事です。
記事内に掲載されているアイテム、及び発売予告などの記述に関しましては過去の記事となりますので現在はお取扱いを行っていなかったり、また既に完売となっているものもございますこと、予めご了承下さいませ。
サドルプルアップという革の、特徴的な部分のご説明です。
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革を柔らかくする、と書いて鞣すという字になりますが、前回書いた通りサドルプルアップの場合はむしろ硬いというのが特徴です。
お店でWILDSWANSの革小物を初めて手に取ったお客さんは、必ず「硬っ!」とか「重っ!」と、お思いになる筈です。
一言で言ってしまうと、サドルプルアップのこの硬さは、長期の使用・ハードな使用に耐えうる為の加工です。一般的な硬い革は折り曲げに弱く、ギン面(革の表面)が割れやすいのですが、サドルプルアップの場合、先述の通りオイル成分が通常よりも多く含まれていますので、これにより「硬いのに割れにくい」という、他に例を見ない革であることも特筆すべき点です。
長期の使用・ハードな使用を前提とした加工を施してあるので、経年変化のスピードも他の革に比べてゆっくりしています。従って、この革で作った製品の寿命も格段に上がりますし、長いスパンでエイジングを楽しむことが出来ると思います。
ですので、製品を1~2年で必ず買い換えると言う方や、気の短い方には、もしかしたら向いていない革かも知れないです。(物を長くお使いになりたい方や、育てるのが好きな方にはピッタリだと思います。)
勿論、持ち主の方の使用方法・使用頻度によって寿命は変わりますが、それを差し引いたとしてもタフな革だと思います。
ところで、サドルプルアップのプルアップとは、皮革を折り曲げたり、引っ張ったりした時にオイルが繊維内を移動して表面の色が変わる「プルアップ効果」が名前の由来です。
下の写真が革を折り曲げた時に見られるプルアップ効果です。
ただ、プルアップ効果が顕著に見られる革は他にも沢山あります。むしろ他の革の方が確認しやすいかも知れません。(これには諸説あるのですが、サドルプルアップの場合、オイルの成分が通常よりも多く含まれている為、折り曲げてもオイルの逃げ場が少なくそれによって色の変化も少ないのでは、という見解があります。)
さて、部位としては牛革の中でも平均的に厚めである、成牛の肩(ショルダー)の部分を使っています。トラと呼ばれる首のしわや血筋が多く見られるパートです。
そういったものを隠す為にコッテリ顔料を乗せて誤魔化す革もあるのですが、サドルプルアップは染料仕上げにより、自然の風合いを残しています。(※但し、厳密に言うと表面にうっすらと顔料も乗っていて、これは革の表面をより良く見せる為の薄化粧と言えます。)
(トラや血筋は好きな方もいらっしゃいますし、嫌がる方もいらっしゃって面白いです。) 染料仕上げにすると、革の表情は独特のムラと透明感が出ます。感触も良く、使い込むと光沢と風合いが増して、徐々に馴染んでいきます。そうこうしているうちに自分だけのものに変化していくのですが、これこそが自然の風合いを大事にした革の醍醐味ですね。
サドルプルアップの場合、そのスパンがとても長い訳です。
また長くなってしまいました。次回、また続きます。